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月 光
第2章 3.願い
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 小柄な身体を抱き上げて寝室に運んでいる間も、唇を離すことが出来ない。ようやく辿り着いた寝室への扉をカイは片手で乱暴に開けた。寝台を覆う深い海の色をした天蓋を性急に捲り上げると、口付けたまま寝台に倒れこむ。角度を変え、舌を深く絡めあい吸い上げながら、カイは翡翠の夜着の胸元を性急にはだけた。

 無理やり抱いたのは半年も前、ただ一度の契りだった。あれは夢だったのではないか、とさえ思い始めていた。皇帝としては、あの男やフレイアにすぐに処罰を与えるのが正しいのかもしれない、と頭の片隅では理解している。だが、翡翠の拙い愛の言葉でカイの心は歓喜が完全に支配していた。ようやくただ一人愛する人の心が手に入ったのだ。体中の熱が、血液が沸き立つほど翡翠の全てを欲している。

 長く激しい口付けは、物慣れない翡翠から呼吸を奪うほどだった。苦しさに僅かにもがくと、ようやく唇が解放される。カイの唇はそのまま顎を伝い首筋に下りると、耳の後ろの、あの男がつけた印を痛いくらい強く吸った。忌まわしいものを消し去るように新たな刻印を刻むと、白い首筋にも所有の刻印を刻みながら、それは少しずつ下がって行く。
 もう何者にも隔てられたくないと、邪魔をする夜着を脱がそうと手をかけたところで、ようやく我に返った翡翠に腕を掴まれた。
「カイ…カイ、待って……」
「もう待てないし、待たない。今夜からは嫌も聞かない」
 翡翠の制止などものともせず、するりと夜着が取り去られる。月光を浴びてほのかに輝く白い胸元が露わになると、カイはその小さな膨らみに口付けた。
「いや…い…や、カイ、お願い……。怖い……」
 カイに初めて会ったあの夜のように、全身をくまなく触れられれば、子供の自分を知られてしまうだろう。そして、もし知ったなら、カイはフレイアの元へ行ってしまう。フレイアの放った刃は、本人の思った以上に翡翠を傷付けることに成功していた。
 止まったはずの涙が再び溢れ出していた。

 フレイアが言葉の刃で翡翠を貫いたことなど知り得ないカイは、自分が無理やり奪ったことが、これほどまでに翡翠を怯えさせたことに言葉が見つからない。許しを請うべきなのかもしれないが、ようやく得た翡翠の心を失うのが怖い。
 カイの胸をずしりと重いものが満たした。自分のしたこととは言え、それでもあの時はどうしても翡翠が欲しかった。そして、今、翡翠の心を得た喜びの前で、カイは翡翠の全てを気が狂いそうなほど欲している。

「私が怖いか?」
 カイが怖いわけでは決してない。ただカイを失うのが恐ろしくてたまらない。それでも翡翠は僅かに首を横に振って意思を伝える。
「翡翠、私を受け入れてくれ。お願いだ……」
 涙で濡れた翡翠の頬に、カイはそっと自分のそれを押し当てる。
「愛している、翡翠。おまえだけを誰よりも」
 どくん、と翡翠の鼓動が強く打つ。カイがずっと胸に秘めていた言葉は、翡翠の怖れを包み込み、容易に溶かしてしまう。
「カイが好き……。大好き」
「怖がらなくていい。翡翠はただ身を委ねてくれればいい」
 宥めるようにそっと口付ける。それは甘く優しい口付けだった。激しい口付けにふっくらと綻んだ下唇を甘噛みして促すと、そっと開く唇。それは翡翠が自分を受け入れるという意思表示なのだ、とカイは勝手に解釈した。そして口付けは再び激しさを増す。
 
 翡翠の息が上がる頃、カイの唇はゆっくりと顎から喉へと下りていく。柔らかな乳房は、カイの大きくてすこし固い感触のする手に包まれる。柔らかくはあるが瑞々しい弾力を持つ乳房を、カイの手が優しく弄る。頂を指の腹で擦られ、硬く実を結んだところをカイの唇が含んでしまう。
「あっ……」
 背筋を甘美な衝撃が突き抜け、思わず上げた自分の声に強い羞恥を覚え、翡翠は慌てて口を両手で押さえた。胸の頂を強く吸い上げられる。
「んっ……ぅん…」
「だめだよ、逆らっては。身を任せて。翡翠の声も何もかも、私のものだ……」
 翡翠の手は、瞬く間にカイに取り去られ、寝台に縫い付けられてしまう。敏感になった胸の突起をカイの唇が吸い、そして舌が執拗に突つく。
「あ……ん……ぁ」
 カイに声を抑える術を奪われてしまった翡翠は、たまらず甘い啼き声をあげた。カイに身体中に口付けられ、その手は愛撫を与える。翡翠は熱い激流に飲み込まれ流されて、ただカイに縋りつくばかりになっていた。

 翡翠の下半身から縮こまっていた夜着を抜き去り寝台の下に放り投げ、すぐさま自分もむしり取るようにして脱ぎ捨てると、カイはそっと体を重ねる。脚を開かせようと手を掛けると、翡翠は膝に力を込めて抗った。
「いい子だから力を抜いて……」
 力なく首を横に振る翡翠に頬を寄せる。囁いた声は甘くかすれている。
「私の全ては翡翠のものだ。だから翡翠の全てを私に与えてくれ」
 愛撫に翻弄されぐったりしている翡翠の耳に、カイの声が直に伝わった。胸にきゅっと引き絞られるような甘い痛みが走る。身体の奥深くから熱い何かが湧き起こり、体中に染み渡っていく。

 カイは、翡翠の膝裏に手を入れると脚を開かせ、素早く自分の身体を割り込ませた。細腰を逃れられないように片腕で抱きすくめると、薄い下草の下に息づく秘花に指を伸ばす。淡色の花弁をそっとくつろげると、そこはしっとりと蜜を湛えてカイの訪れを待っていた。
「いい子だ……」
 愛撫に応えて蜜を溢れさせる翡翠に、カイの欲望は募るばかりだ。大切にしたいのに、その一方で欲望のままに滅茶苦茶にしてしまいたい。せめぎあう二つの思いは、今のところ前者が勝ってはいるがそれも長くは持ちそうになかった。
 可憐な花にカイは口付けた。密やかに息づく花芽を優しく愛撫し、舌が甘い蜜をからめとる。
「やぁっ……ん……あぁっ」
 翡翠の中で何かが弾け、強い光に包まれる。暗黒の世界が全てだったはずなのに、真っ白のまばゆい光の世界に放り投げらるように押し上げられる。しなやかな身体が反り、ほんの少しの愛撫で達したことをカイに教える。
 頼りない腕が震えながらカイを求めて伸ばされている。カイは、それに気付くと胸をぴったりと合わせて覆いかぶさった。翡翠の腕が助けを求めるように、するりとカイの首に巻きつく。
「あ…ぁ……、カイ、助けて……」
 もう何も考えられない。ただカイのことだけしか。
「ここにいるよ、翡翠。大丈夫だ……」
 快楽に流れた甘い涙を唇で吸い取ってから、翡翠を横抱きにして抱き上げて寝台の上に座る。快楽を知らない翡翠の怯えも何もかもが愛しい。
 翡翠は、カイの首に腕を巻きつけたまま、胸に頬を押し付けて荒い呼吸を繰り返していた。自分が何をされているのかさえ気付いていないのかもしれない。目の見えない翡翠はカイの身体に触れている方が安心するようだった。カイは、そのまま翡翠の中にそっと長い指を挿し入れた。
「あっ……」
 ひくりと翡翠の身体が揺れる。翡翠の表情を何一つ見逃さないようにして慎重に指を挿入する。
「や、いや…あ…ぁ……」
 敏感な最奥を指先が引っ掻くと、カイの指がきゅっと締め付けられる。甘美な締め付けに目眩を覚えながらも、ゆっくりと翡翠の身体を開いていく。溢れる蜜はカイの指を滑らかに中へと導く。ゆっくりと抜き挿し蠢かせた指は間もなく3本に増やされ、翡翠はカイの与える快楽に翻弄されていった。
「ああっ……あっ、だ…だめ……あっ」
 熱く潤う粘膜を擦り上げられ、自分でさえ知り得ない敏感な場所を何度も指先で刺激されると、どうにかなってしまう。カイの親指は絶えず花芽や花弁を優しく刺激し続ける。優しい口付けを髪に与えながらも、カイの指は容赦なく擦り上げていく。
「あっ…やぁ……ああぁっ」
 高い悲鳴をもらし、背中が先程よりもぐんっとしなる。カイの指を受け入れている翡翠の中が、びくびく痙攣しながら強く締め付ける。
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